こんにちは、Chiyo(ChiyoM_London)です。
先日Twitterとインスタで2022年10月からの光熱費の変更点についてまとめたところたくさんの反響がありました。
数日前に発表されたイギリス政府の光熱費対策、Price Capが一般的な家庭で£2,500になるよと言われてもいまいちピンとこないのでまとめてみました。とりあえず政府のサポート入ってもガス代は去年の冬に比べて2.5倍くらい高くなりそう😱 pic.twitter.com/fnxVPKyFTt
— Chiyo.M (@ChiyoM_London) September 12, 2022
イギリス 光熱費とネットで調べると80%の値上げ、エネルギー貧困など刺激的な見出しの記事がヒットする中で現在イギリスで生活している人、そしてこれから渡英する人にとっては不安が大きいタイミングなのではないかと思います。
そこでこの記事ではこれからイギリス生活を新しく始める人にも分かりやすいようにイギリスの光熱費の仕組み、基本を抑えつつ2022年の政府支援の中身や冬を迎えるうえでやっておきたいことを幅広くまとめてみました。
長くイギリスに住まれている方にとっては既知の情報も多いと思いますので目次から興味のある項目だけ読んで頂いても大丈夫です。
イギリスの光熱費の基本情報
電気とガスの家庭での主な使い道
新築のフラットなど一部ではオール電化の場合もありますが、イギリスの多くの家庭は電気とガス両方を家庭で使っているところがほとんどです。
ガスはセントラルヒーティングの暖房やシャワー、キッチンのガスコンロに使われています。冬になると使用量がぐっと増える光熱費です。
電気はガスコンロ以外の家電、照明など幅広く家庭のインフラをカバーしています。
ガスに比べると使用量の季節ごとの変化は少ないのですが、在宅勤務の影響で数年前と比べると家庭の電気使用量が増えたと感じる人も多いかもしれません。
光熱費は一般的に家の広さと比例していて高くなります。
しかしイギリスは300年前の古い建物から新築まで幅広く、断熱性も大きく異なるため同じような大きさの家でも光熱費にばらつきがあるのが実際のところです。
これから渡英される方はニュースで見かける平均的な光熱費の情報はイギリス生活の予算をイメージするのに使いつつあくまでも参考程度に留めておくのがおすすめです。

電力は公共ではなく自由化されている
イギリスでは電力は公共のサービスではなく1990年に電力市場が自由化されています。
消費者は電力会社をSwitchすることでよりお得なプランに加入できるのですが近年は競争激化や価格高騰により小規模な会社の破綻が相次いでいて自由市場がうまく機能しているという印象はあまりありません。
また今年に入ってからは急激なエネルギー価格の高騰でどの会社を選んでもEnergy Price Cap (詳しくは後述します)の値段設定になっているため消費者の間でも電力会社を変える動きが少なくなっています。
そのような状況で大手5社のBritish Gas, EDF Energy, E.ON Next, OVO and ScottishPowerが依然全体の70%のシェアを占めています。
メーターの種類がさまざま
現在使われている電気、ガスのメーターは主に3種類。
イギリスはメーターの種類によって、支払い方法やメーターリーディングの要否が違うのが特徴で、今回の政府の補助金も使っているメーターによって支払われ方が異なります。
新しくイギリスに引っ越してきた方はまず家のメーターがどの種類であるか知っておくといいでしょう。
一般的なメーター

定期的にメーターの数字を電力会社に報告するメーターリーディングが必要。
支払いは銀行引き落とし(Direct Debit) が一般的。
Smart Meter

近年普及しているスマートメーター。
リアルタイムで使用中の電力が分かり、メーターリーディングが不要。
一般的なメーターから変更するのに電力会社に依頼する必要がありますが大手の電力会社が推進しており基本的に無料で変えてくれます。
支払いは銀行引き落とし(Direct Debit) が一般的。
Prepaid Meter

使う分を事前にカードやアプリでチャージして支払うメーターでメーターリーディングは不要。
残高がなくなり、一定の債務が超過すると電力、ガスの供給が止まる仕組み。
近年はあまり見かける機会は少ないですが2022年現在で未だに全体の16%の家庭でPrepaid Meterを使っているそうです。
ちなみにPrepaidのSmart Meterというものもあり、お店に行ってカードをTop Upする代わりにアプリで支払いできる利点があります。
月々の支払い額は実際に使った分ではない
イギリスに来て一番不思議だったのが毎月の請求金額。
日本だと前月に使った分を翌月請求されるのが一般的だと思うのですが、イギリスは実際に使った金額ではなく電力、ガス会社がメーターリーディングから1年間の使用量の予想を事前に立ててそれを12ヶ月で割った金額が毎月請求されます。
そのため予想より実際の使用量が多かった場合はDebt、少なかった場合はCreditがアカウントに記録されて将来の請求額に反映される仕組みです。
光熱費が低い夏にも冬と同じ金額を払うことで強制的に冬に向けて積立出来るという点、そして使用量が増えてもすぐにびっくりするような請求額が来ないのはメリットなのですが、この方式のためどうも毎月どれくらい使ったのか分かりづらく節約の対策が取りづらいんですよね。
また月々の支払いが一定額なので、なんとなく年間の光熱費が上がっていても気づきにくい仕組みになっています。
ちなみにこれは銀行引き落としの話で、Prepaid Meterを使っている場合は請求は使った分に対して払う仕組みになっています。
メーターリーディングが大事
イギリスで引っ越し、新しく家を買って入居する場合は日本のように使用開始の申し込みをしてから開通という流れではなく、入居日のメーターを申告してそこから自分のアカウントに切り替えて使うことになります。
電力、ガス会社の人が切り替えの手続きで家に来てくれることはないのでトラブルを防ぐために入居日のメーターは写真を撮っておくのが大事。
ちなみにPrepaidの場合はメーターリーディングが不要なのですが、過去の住民の債務がメーターに残っている可能性がありそのまま家に残されたカードでTop Upして使ってしまうと債務を引き継いでしまいます。
使用する前にアカウントを変更をして新しいカードをもらってから使うようにしましょう。
光熱費の料金体系について
ここからは光熱費の料金体系とプランについて説明していきます。
電力、ガス共に光熱費は下記の2つの費用をもとに請求されます。
Standing Charge =基本料金 (使用量に関わらず1日当たりに請求される費用)
Unit Rate =使用料金 (Kwh単位に掛かる費用)
政府の支援策(Energy Price Guarantee) で£2,500 price cap for typical householdsという言葉を聞いた人も多いと思うのですが、これは年間£2,500以上チャージされないというわけではありません。
正しくは電力、ガス共に2年間はStanding ChargeとUnit Rateのレートの上限が固定されるというもの。
Unit Rateはkwh単位で掛かるので政府の支援が入っても電力の使用量が多ければ年間£2,500以上請求されることがあるし、逆に使用量が少なければ光熱費は低くなるのが注意点です。
(ちなみにこのリズ トラス氏の発言はイギリス人にとってもかなり誤解を招く表現でFact Checkが入ったり、各電力会社が説明をする事態に発展しています。)
£2500 is *not* the maximum any family will pay on their energy bills this year.
We wrote to the PM about getting this wrong yesterday.This morning, she’s repeated the false claim again in local BBC interviews.
The public deserves better.https://t.co/zphIoe0PwL
— Full Fact (@FullFact) September 29, 2022
料金プラン (Fixed or Variable)
電力会社が提供するプランは大きく分けて2つです。
Fixed
Fixedのプランはだいたい1,2年の契約で期間中はStanding ChargeとUnit Rateが契約した時に合意したレートで固定されるものです。Fixedであってもレートが固定されるだけで使用量に応じて光熱費は変わります。
レートが魅力的な時に固定しておけば今のように光熱費が高騰している時には契約期間中は契約レートを維持できるのでお得になります。
デメリットは契約期間中に他のプランに移ったり、電力会社を変える場合にはExit Feeがかかることも。
(ちなみに2022年10月現在、政府の支援策energy price guaranteeより安いFixedプランを提供している電力会社はないそう、Fixed Plan自体の販売を辞めてしまっているところも多いです。)
Variable
名前の通りStanding ChargeとUnit Rateが変動するプラン。
各電力会社が決めているstandard variable tariff(もしくはDefault Tariff)が適用されるのですが今回のように*Energy Price Capが変更になるとVariableプランのレートも同じタイミングで変更になります。
*Energy Price Capとは
Ofgemが発表する電力会社が消費者に請求できるStanding ChargeとUnit Rateの上限。電力会社が設定するDefault Tariffに適用される。エネルギー高騰を受けてPrice Capは四半期ごとに更新(2022年現在)されるが2022年10月からの2年間は政府の支援策Energy Price Guaranteeで定められたレートがDefault Tariffに使われる。
2022年光熱費を取り巻く環境
ここからは2022年のイギリス光熱費事情をまとめていきます。
混乱の背景_Energy Price Capの度重なる高騰
イギリスの光熱費が上がり始めたのは2022年の4月、この時はガスの使用料金だけでなく毎日一定でかかる電気の基本料金もがっつり上がりトータルで約60%の値上げになりました。
光熱費が問題が再燃し始めたのは7月後半頃。
四半期ごとに見直されるEnergy Price Capが10月に更に80%値上がりする予測が出てなんと2023年1月にも更にまた値上がりするだろうというニュースが出たためとても払えないという声やFuel povertyというワードも耳にするように。
Twitterで在英の方にアンケートを取ってみたのですがFixedプランが既に高くなりすぎていて様子見するしかない方も多かった印象。
在英の方に聞きたいのですがみなさんEnergy BillのTariffをFixに変えたりしてますか?それとも様子見でVariable?パッと見た感じ固定にすると10月の予想Price Capよりは割高だけど、来年以降の値上がりを考慮するとお得になりそうで迷うーー。それにしても高いーー😱
— Chiyo.M (@ChiyoM_London) August 9, 2022
そして8月後半にはOfgemから予想通り現在のレートから約80%も高くなるEnergy Price Capが正式に発表されます。
ちょうどこの時はボリス・ジョンソンが辞任を発表、保守党の次期党首選が行われていました。
Energy Price Guarantee
トラス新政権のエネルギー危機対策として9月の頭に打ち出されたのがEnergy Price Guarantee。
この政府のサポートにより、10月からの光熱費はOfgemのEnergy Price Capではなく下記のStanding ChargeとUnit Rateが2022年10月から2年間適用されることになりました。
£400 Energy Bill Support Scheme
Energy Price Guaranteeに加えて£400の政府の補助金も10月から始まります。
こちらはイングランド、ウェールズ、スコットランド(北アイルランドも同様のサポートあり)対象に下記の金額を光熱費の請求からディスカウントするというもの。
- 10月 £66
- 11月 £66
- 12月 £67
- 1月 £67
- 2月 £67
- 3月 £67
£400の受け取り方については電力会社によって異なるためこちらのサイトで確認されることをおすすめします。
知っておきたいポイント
- 申し込みは不要
- Prepaidメーターの場合はTop Upする時にVoucherがもらえる
- 電気、ガス別々の会社で契約している場合は電気の会社からディスカウントをもらえる
補助金が3月まであるためざっくりと電気、ガスの月々の支払い金額が£125以下の場合は10月以前の光熱費より安くなるそう。
冬を迎える前にやっておきたいこと
最後に光熱費が上がる冬が来る前にやっておいたほうがいいことを簡単にまとめておきます。
家計の光熱費の予算を組み直す
既にイギリスに住まれている方は9月末に電力会社から10月からの新しい年間見積もりが届いていると思います。その金額を基に毎月の光熱費を算出、家計の予算に入れて払えるかどうかを確認しましょう。
去年と比べれば高くなるのは確かなのですがもし家計で問題なければ、政府の補助金も3月まで続くので必要以上に暖房を切ったり生活を我慢しなくても多くの人にとっては支払える金額になっていると思います。
Prepaidメーターの場合は現金の確保を
Prepaidで支払っている場合は使った分がすぐに請求に反映されるので今年の冬は多めに現金を準備しておきましょう。
ざっくりとした計算ですがガスの場合は去年の冬に支払った金額の40%増、電気は20%増の金額を準備しておけば冬を乗り切れると思います。
これから渡英する場合は目安の金額で予算組みを
これから冬の時期に渡英される方はこちらの情報などで目安の金額を頭に入れて予算組みをされるといいと思います。
また光熱費をなるべく抑えたい場合は古めの一軒家よりも、近年建てられたフラットや断熱性の高い家を選ぶと節約になります、家選びの参考に取り入れるのも良いかもしれません。
熱効率の良いものに投資をする
冬の光熱費が高くなる主な要因は暖房とオーブン調理。
光熱費を抑えたい場合は電気毛布、スロークッカーなどに投資して使用量を下げるのもありですね、今年の冬は光熱費の節約アイディアもTwitterで話題になりそうです。
Chiyoさんのイギリス光熱費爆上げまとめ、とても分かりやすい!いつも良い情報シェアありがとうございます。この冬のイギリス生活はいかに光熱費を節約するかが大事ですね。窓を変えたり、屋根裏に断熱材を入れる話もよく聞きます。私は電気毛布(電気代2p/h)やスロークッカー(10p/h)導入も考えてます。 https://t.co/KXXTgX0B05 pic.twitter.com/3I34gschtM
— 𝖸𝗈 𝖮𝗄𝖺𝖽𝖺 (@yoookd) September 15, 2022
イギリスの光熱費の基本と最新情報のまとめ
今まであまり話題になることがなかったイギリスの電気、ガス事情ですが今年は光熱費の高騰で一気に注目が集まりましたね。
まだまだ光熱費は高止まりしそうですが、現在は政府の支援も入りパニックになるレベルではないと思うので特にこれから渡英される方にはこの記事が少しでも安心材料になればいいなと思っています。
こういう情報も知りたいなどありましたらお気軽にコメントやTwitterで教えてくださいね。
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