海外在住の日本の国民年金、加入するべきか考えてみた

こんにちは、Chiyo(ChiyoM_London)です。

海外で住んでいると悩むのが任意加入の日本の国民年金どうするのか問題。

先日こんなアンケートをTwitterでとってみました。

 

海外在住で年金に加入している人の割合は3割ほど

年金に加入しない理由で最も多かったのはリターンが低すぎて自分で運用したほうがいいという声、将来破綻、違うシステムになりそうという声と合わせると半数以上を占めていて経済的な理由で払っていないという人よりも敢えて払わないという決断をしている人が多い結果になりました。

 

ちなみに年金加入している理由はその他がダントツ。

頂いたコメントによるとその他は日本の会社で厚生年金に加入していて自動的に国民年金に加入しているケース社会保障協定があり日本の国民年金に加入することで現地の年金の受給資格を満たすというケースがありました。

ちなみに日本と社会保障協定のある国は23ヶ国、国ごとに内容が違います。

イギリスは一時的な派遣(駐在、会社派遣の留学など)の場合には日本の社会保障制度にそのまま加入をしてイギリスの年金を免除することはできるのですが日本とイギリスとの年金加入期間の通算は出来ません

社会保障協定

面白いのが国民年金に加入している人の3割は迷いながら払っているというもの、払っている人と比べると迷いつつもそのまま払っている人が一定数いるようでした。

今回の記事ではそんな悩んでいる人へのヒントになるような情報をまとめていきますね。

国民年金の基本情報 (2021年現在)

  • 国民年金の基本保険料は2021年現在月額16,610円
  • 1年間で受け取れる満額は、2021年現在77万9,300円
  • ただし国民年金の加入期間や支払った保険料額で貰える金額が変わる
  • 国民年金の加入期間が10年以上でないと受け取れない
  • 遺族年金は18歳以下の子供がいる場合に支払われる (月額8万から10万程、子供の数による)
  • 障害年金は加入者が重度の障害になった場合に支払われる (年間780,900円、障害の等級、子供の数により金額が変わる)

 

日本の国民年金を任意加入するメリット、デメリット

メリット

  • 日本に住んでいる人と同じように国民年金を満額にすることができる 
  • 国民年金を任意で加入していると障害年金、遺族年金に同時に加入できる
  • *海外にいても受け取れるので現地の年金と合わせて終身でもらえる老後のお金を増やす選択肢を持てる
  • 将来老後を日本で過ごす場合は年金の為替リスクなし

*こちらはお住まいの国によって日本との社会保障協定の有無、ある場合でも国によって内容が違うので現地のファイナンシャル・アドバイザーや公式の情報で確認されることをおすすめします。イギリスの場合は社会保障協定はあるものの通算はないため、両方の年金を受け取るためにはイギリス、日本で10年以上年金を払うことが条件になります

デメリット

  • 払った分のリターンはどれくらい長生きするかにもより、明確に分からない。
  • 将来今の年金システムが保持される保証はなく、システム自体が変更になる可能性もある
  • 円の価値が将来著しく低下し海外で老後を迎える場合は思っていたほどの資金にならない場合がある

日本の国民年金に加入しないメリット、デメリット

メリット

  • 国民年金に支払う分を自分で運用できる
  • 任意加入しなくても日本の年金を受給するための資格期間に含まれる (例えば9年しか日本で国民年金を納めていなくても9年分の年金はもらえる)

デメリット

  • 任意加入していない期間は資格期間に含まれるが年金額には反映しない 
  • 加入していない期間に亡くなったり、障害の状態になった場合は遺族年金、障害年金の対象にならない

 

国民年金の損益分岐点

国民年金は賦課方式なので実際に自分たちが積み立てたものを受け取るというわけではないのですが、払った金額に対していつ受給額が上回るかという観点から損益分岐点を考えると受給開始から10年というのが一つの目安になります。

国民年金の利回り試算

 

年金を払うより、自分で運用したほうがいいというのは本当か?

年金を払わないという選択している中で多かったのはリターンが低すぎて自分で運用したほうが良いという声だったので、自分で運用する場合の2つの選択肢について考えてみました。

 

  1. 保険会社などが提供している終身の年金に加入する
  2. 私的年金や金融商品で運用して老後になったら引き出して使う

 

保険会社などが提供している終身の年金に加入する

イギリスでは保険会社がAnnuityという商品を出しています。

仕組みは決まった資産額を55歳以降に保険会社に預けることで終身でいくら毎年保険会社からもらいますという契約を加入時にします。死ぬまでもらえるものなので年金と近い形ですね。

 

実際もらえる金額は加入者の健康状態や年齢によって異なりますが、2021年現在ベストのannuity ratesを大手証券会社hargreaves lansdownが発表していたのでその情報をもとに年金と比較してみましょう。

この表は£100,000 (約1,500万)を保険会社に預けた場合、Annuityとして終身でもらえる金額になります。

 

この中で国民年金と近いものはSingle Life, Level, no guarantee Age 65(65歳から75万円を終身でもらい続けて亡くなった時に支払いが終わり、預けている資産もなくなる商品)です。

 

国民年金と比べてみるともらえる金額がほぼ同じなのですが55歳で払う金額が倍近くになるのが大きな違いですね。(Annuity 1,500万 VS 国民年金 800万)もちろん、55歳まで手元で運用することはできるので800万を元手に毎年5%くらいのリターンで長期で運用すれば1,500万円に到達する可能性はあります。

 

ただインフレ調整もないですし国民年金の代わりに加入するものとしてはあまり魅力的ではありません。

 

お住まいの国によってはお宝保険のような利率のよいものもあるかもしれないので、日本円ではなく現地の通貨で年金システムを作りたいという方は一度このような金融商品を現地で調べてみて国民年金を継続するかどうかの判断材料にされても良いかもしれません。

 

私的年金や金融商品で運用して老後になったら引き出して使う

 

国民年金に払う総額約800万円を現金で持っていて(運用ゼロ)国民年金と同じ金額を毎年引き出した場合は受給してから約10年で元本が底をつきます

 

平均寿命を考慮すると現金で持っているくらいなら国民年金を任意で加入したほうが終身でもらえる安心感を得ながら結果的にもらえる金額も大きくなるケースが多そうです。

 

ここで気になるのが国民年金を払わずに金融商品に40年投資をした場合どうなるかという話。

 

早速下記の前提条件でシュミレーションしてみました。

前提条件

  • 20歳から60歳まで40年間毎月16,540円を運用に回す
  • 運用は64歳まで、65歳からは運用せず78万円を毎年引き出す

条件は2021年の国民年金保険料、年金額を基に設定しました。将来の保険料の増加、物価上昇、現在行われているマクロ経済スライドは計算を簡易化するために入れていません。

年間2%で運用した場合 

  • 60歳時点で運用益と元本で約1,267万円が貯まっている。
  • それを65歳から78万円を引き出した場合、貯めた資金は82歳の時点でなくなる

年間3%で運用した場合

  • 60歳時点で運用益と元本で約1,600万円が貯まっている。
  • それを65歳から78万円を引き出した場合、貯めた資金は88歳の時点でなくなる

年間5%で運用した場合

  • 60歳時点で運用益と元本で約2,664万円が貯まっている。
  • それを65歳から78万円を引き出した場合、貯めた資金は100歳を超えた時点でもまだ400万円残っている

 

現金で持っていた場合と比べると年間2%のリターンで運用した場合は男性の平均寿命81歳を超える程度、年間3%のリターン女性の平均寿命87歳を超えたところで資金が尽き、5%の運用を長期に渡って継続できた場合は100歳になっても資金がまだ余るという結果になりました。

 

ちなみに年間3%程のリターンだとしてもお金を引き出しながら運用を続ければ100歳になっても資金は尽きません。

 

2%-5%のリターンは投資信託でも狙える範囲ですし、自分で運用したほうが国民年金よりマシというのはあながち間違いではなさそうです。

 

海外在住の日本の国民年金のまとめ_セーフティーネットとして考えよう

海外在住にとって国民年金は任意になるのでどうしてもお得か損かという文脈で語られがちですが、そもそも年金というのは老後の生活を最低限維持するための基盤です。

 

なのでリタイアせずに一生何か仕事をしていく人、老後のお金を生み出せる資産があったり、貯金がたくさんある人は正直国民年金を払わずに自分で金融商品に投資していくスタイルでも全く問題ないですし、むしろ年金を払うよりもリターンが良かったという結果になる人も多いのではないかと思います。

 

国民年金が効いてくるのは老後が近づいてきて、仕事はもうあと数年で終わるけど老後の資金が貯まっていない、でも家賃や住宅ローンを払わなくてはいけないという厳しい状態の時。

 

2021年現在イギリスの年金は35年フルで払っても年間£9,339.2。(The new State Pensionの場合)

残念ながら生活を全て年金だけで賄うには充分な金額ではなく、仮に老後を日本で過ごす場合はインフレ調整が入らなくなるのもデメリット。

 

個別相談でも老後についてはよく話題になるのですが、国民年金が全くない状態とある状態では老後のお金を準備する難易度が全く変わってくるのでもし今老後のお金が準備できていなくて不安という場合は国民年金をセーフティーネットのために払っておくというのは悪い判断ではないと思います。

 

ちなみに現状お金が回っていない状態で任意の日本の国民年金を払うのは本末転倒なのでその際は一旦止めてしまってお金に少し余裕が出たタイミングで再開したり、更に余裕があれば個人年金やISAなどの運用で長期的な資産形成を検討するのが良いかもしれません。

 

国民年金どうしよう、、と迷っている方にこの記事が考えるヒントになれば幸いです。

 

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