こんにちは、Chiyo(ChiyoM_London)です。
約1年前にロンドンでフラットを購入したのですがイギリスに来るまでは住宅購入について消極的でした。
日本では90年代の不動産バブル崩壊やこの先の人口減少などを考慮して家はあえて買わないと決めている人も多いですが、イギリスは過去の不動産の値上がりの歴史、持ち家に対する税金の優遇から多くの人が早い段階で家を買ったほうが良いという強い意見をもっています。
とは言ってもみんなが買ったほうがいいと思ってるものって逆に落とし穴があるんじゃないの?と疑ってみたり、購入前には出来る限りいろいろな方法でシュミレーションをしていました。
最終的に家を買うという決断をしたのですが、その時に一番腑に落ちたのがPension CraftのBuy or Rent a House – Which is Best? という記事。
この記事ではPension Craftの記事を参考にイギリスで家を買うのは賃貸より本当にお得なのかを掘り下げていきたいと思います。
ちなみに今回の記事はお金のメリットのみに標準を合わせて比較しているので家を買うことで得られる住環境の向上や賃貸の流動性のメリット、個々の不動産事情については全く考慮していませんのでその点はご了承ください。
結論: 家を買ったほうがお得だけど、金利や賃貸価格によっては賃貸が勝つこともある
記事が長くなりそうなのでまずは結論から話しますね。
- 過去23年のイギリスのデータ(1996-2018)を見ると賃貸と比べて家を購入した人は平均300,000ポンド以上金銭面で利益が出ている
- IMLAの未来予測(2018年から30年間)によると、不動産が全く値上がりしなかった場合でも不動産を購入した方が350,000ポンドほど賃貸に比べて金銭面で有利になる計算
- 賃貸でも年6%ほどの投資をすれば家を買うより金銭的なメリットがある場合も
- ロンドンは賃貸価格が高いので、相対的に家を買うことがメリットになるケースが多い
- 賃貸 VS 持ち家は住宅ローンの金利が鍵、今は歴史的に見てもかなり低い水準のため今後は2,3%金利が上がることも想定すべし
賃貸(現金で運用)と持ち家の比較
まずは賃貸をしながら貯金は現金で運用している人と持ち家との比較から。
こちらはIMLA(The Intermediary Mortgage Lenders Association)から発行されているレポートが過去(1996-2018)と未来の比較についてよくまとまっているので参照しました。
こちらの比較の前提条件はこちら
- 1996年の時点で2,600ポンドの貯金がどちらもあり当時の家の平均価格の5%のデポジットは払えたとする
- 家を購入した人は1996年の第1四半期に51,400ポンドの家を5%の頭金で購入。
- 住宅ローンの利子計算は期間の平均を採用
- 家を購入した人の支払金額は住宅ローン支払いの他に修繕費、維持費、保険、購入にかかる費用を含む(住宅の1%)
- 賃貸価格は1996-2012の平均を採用(212,200ポンド)
日本で生まれ育った身からすると1996年に51,400ポンドだった不動産が2018年に214,200ポンドになるなんてインフレーションを考慮しても夢のような話に思えたりするんですが本当の話、羨ましいです。
ちなみに下記はイギリスの金利の推移。1996年は80年代、90年代前半と比べると金利が下がっていますが2000年前半までは5%前後推移していて今の金利水準よりはだいぶ高め、それでも賃貸に比べて300,000ポンドの金銭的メリットがあったという時代なんですね。
source: tradingeconomics.com
次に未来予測、2019年から30年の期間で賃貸と持ち家どちらが金銭的なメリットがあるのかを比べています。
こちらの比較の前提条件はこちら
- 不動産価格が30年通して購入時の価格から値上がりしない (キャピタルゲインなし)
- 不動産価格は2019年の平均230,292ポンドを採用
- 住宅ローンは25年間、利子は2019年のレートを採用
- 家を購入した人の支払金額は住宅ローン支払いの他に修繕費、維持費、保険、購入にかかる費用を含む(住宅の1%)
- 住宅維持費用と賃貸は2%のインフレーションを考慮
この計算によると30年間で持ち家の人が支払う金額は317,900ポンド、賃貸に比べて133,700ポンド少なく住宅ローンを完済して不動産も手に入るので最終的に賃貸に比べて家を買ったほうが352,000ポンドほど金銭的なメリットが出るという予測になっています。
不動産のキャピタルゲインがない状態でこれだけ持ち家派が有利になる予測になっている要因は住宅ローン金利の低さと2%のインフレーションを考慮した賃貸の値上がり。
実際はもう少し住宅維持費用がかかるだろうし(サービスチャージや定期的な改装など)、毎年2%のインフレーションがあれば住宅ローンの金利が2019年の水準より上がりそうなので持ち家と賃貸との差はここまで出ないような気がします。
それでもキャピタルゲインがなくても持ち家の金銭的なメリットがあるというデータは魅力的に感じました。
ここまでの情報だと確かにイギリスで家を買ったほうがいいというのは根拠のある話と言えそうですね。
賃貸(投資で運用)と持ち家の比較
ここからはもう少し投資という観点から賃貸と持ち家を比較していきます。
賃貸と持ち家どちらがお得という議論をする時によく住宅ローンの支払い額と賃貸金額を比べて買ったほうがいいと考える人が多いのですがこの比較は同一条件の比較になっていません。
なぜなら家を買った際の戻ってこないコスト(unrecoverable cost)が正しく反映されていないから。
そこでまず賃貸と持ち家の戻ってこないコストを見てみましょう。
賃貸の戻ってこないコスト
賃貸している場合の戻ってこないコストはとてもシンプル、毎月の賃貸価格になります。
家を買った場合の戻ってこないコスト
次に家を買った場合の戻ってこないコスト、主に5つあります。
修繕費(Maintenance fee)と保険
購入すると必要になる家のメンテナンスと住宅保険、だいたい住宅購入価格の1%が目安。
Service Charge (Leaseholderの場合)
Service ChargeはLeaseholderのフラットを購入したときに毎月払うもの、賃貸契約の場合は大家が払っているケースがほとんどなので持ち家のコストと言えますね。
住宅ローン 利子分 (Mortgage interest)
住宅ローンを借りた時に払う利子の支払いは将来物件を売っても戻ってきません。
住宅購入費用
住宅購入の手続きの費用、Stamp dutyやソリシターの費用など、ちなみに物件を売却する時にもかかります。
住宅購入をせずに投資をしていたら受け取れていた利益
住宅購入をせず賃貸の場合、購入に必要な頭金やソリシターの費用を代わりに投資信託や株で運用することができます。
一般的に株式、投資信託の投資リターンは年間6%、不動産は3%程度と言われているので家を買ったことで失われた投資利益(戻ってこないコスト)は初期費用(不動産購入費用+デポジット)x 3%でざっくりと計算することができます。
Pension Craftではイギリスの平均賃貸価格を基に25年後に賃貸、持ち家どっちが金銭的にメリットがあるかを持ち家と賃貸の戻ってこないコストに注目して計算しています。
その結果はなんと賃貸をしながら貯蓄を6%で運用した場合は持ち家も賃貸も金銭的メリットに大きな差はないというデータに。(下記の動画で詳細が見れます。)
せっかくなので私も2020年のロンドンのフラット価格、住宅ローン金利を参考にシュミレーションをしてみました。
この結果によると400,000ポンドで購入した住宅が25年間年間3%で値上がりして837,511ポンドで売却した場合、6%で投資しながら賃貸をした場合に比べて340,000ポンド程金銭的なメリットがあるという試算になりました。
ちなみにもし不動産価格が全く上がらなかった場合は住宅ローン金利が2.3%を超えたあたりで賃貸のほうが金銭的メリットがあるという結果に。
同じ計算方法でもPension Craftの比較より持ち家が有利になったのはロンドンの不動産価格に対する賃貸価格の高さが影響していると思われます。
Pension Craftでは実際にデータを打ち込んで持ち家と賃貸の比較が出来るエクセルを配布しているので興味のある方は是非ダウンロードしてみてください。
イギリスで家を買うのは本当にお得なのかのまとめ
今回はイギリスで多くの人が信じている、賃貸よりも家を買ったほうがお得であるを検証してみました。
今の住宅ローン金利の安さは確かに持ち家派に有利に働いていますしこれからも不動産価格が順調に上がるのであればイギリスで家を買うのは金銭的に良い選択と言えると思います。
逆にもし住宅価格が長らく停滞して(または下落)なおかつ住宅ローン金利が今より上昇する局面になった場合には、賃貸をしながら積極的に株式などの投資に回すことで持ち家派より結果的に多くのお金を貯めることも不可能ではありません。
マイホームの場合は投資ではないので金銭的にお得かどうかが全てではないのですが、やはり大きな買い物になるので購入の前にシュミレーションをして慎重に選ぶのはイギリスであっても同じこと。
この記事が将来家を買おうか迷っている人の参考になれば幸いです。
ちなみにイギリスのマイホーム購入の手続きは不動産のカテゴリーでまとめてありますので興味があれば他の記事も合わせて見てみてくださいね。