こんにちは!Chiyo(ChiyoM_London)です。
前回イギリスの国民年金について記事を書いたのですが、今回は個人年金のSIPPについて仕組みやメリットについてまとめます。
老後に備えたい、既に会社でWorkplace Pensionに入ってるけどSIPPって必要なの?と疑問に思っている人向けに基本情報を抑えたのでぜひ参考にしてくださいね。
目次
SIPPとは
SIPP(self-invested personal pension)とはイギリス政府に承認された個人年金のことで日本だと個人型確定拠出年金(ideco/イデコ)に近い位置づけです。
年金と呼ばれているもののSIPPは公的年金とは仕組みが違い、将来引き出せる金額は積立額 x 運用成績によって変動する投資商品になります。
また通常の投資と違う点は55歳まで引き出せないこと、Tax Reliefと呼ばれる税金の還元を受けられること。
引き出しの年齢制限はありますが、税金の還付が大きいので老後の資金の運用先としては優れている選択肢になります。

SIPPは従来の年金商品と比べると投資先の選択肢、自由度が高く、そして自分で投資先を選ぶ分運用にかかる手数料が割安なことから近年人気があります。
SIPPの加入条件
イギリスに住んでいて、ナショナルインシュランスナンバーを持っている75歳以下の人であれば誰でもSIPPを保有することができます。
SIPPのメリットは?
まずは普通の株やファンドに比べてSIPPに投資するメリットを確認していきます。
- 積み立て時のTax Relief
- 55歳以上で引き出す際に25%分がTax freeになる
- 死亡時の受取人を設定しておくことでSIPPを相続税なしで譲渡できるケースがある
ひとつひとつ説明していきますね。
SIPPの一番のメリット Tax Reliefとは
まずSIPPの一番のメリットと言えるTax Reliefという税金の還元について説明していきます。
最初に聞いた時はTax Reliefって何?どういう仕組みで積立に上乗せされるの?ととっても混乱したので税金がSIPP積立時に還元される仕組みを簡単に図を書いてみました。
①イギリスで会社に勤めていて*¹11,850ポンド以上を年間稼いでいる人は所得税が*²20%かかり日本と同じように給与天引きです。
*¹2019年4月より12,500ポンドに変更予定 *²Basic rate tax payerの場合
②SIPPに入金する時は税金が引かれた給与手取り額から資金を捻出して行うことになります。(Workplace Pensionを除く)
③Tax ReliefはSIPPに入金された金額に対して年間給与額を上限に所得税で引かれた税金分を上乗せしてくれる仕組みです。
例えばSIPPに800ポンドを入金するとBasic rate 20%で計算された200ポンドが税金軽減分として上乗せされるのでSIPPの合計積立金額は1000ポンドになります。
もっと高い税金を払っていたり収入がない人はどうなるの?
ちなみに年間46,351ポンド以上の収入がありHigher Rate(40%)の所得税を払っている人はHMRCにself-assessmentを行うとBasic RateとHigher Rateの差額の税金軽減をHMRCから直接受け取ることができます。
例えば2020-2021年度で年間£60,000の収入がありそのうち£10,000分をHigher Tax Rate 40%で税金を収めていたとしますね。その場合SIPPに£15,000を入金していたとしたら、確定申告をするとそのうちの£10,000分に対して追加で20%のTax Reliefを受けることができます。
またイギリスの収入がない人でも年間2,880ポンドまでSIPPに入金可能で年間720ポンドのTax Reliefを受け取ることができるのもポイント。
一見税金を多く払っている人のみ恩恵を受けそうなシステムですが収入に関わらず全ての人が利用できる私的年金となっているのが特徴的です。
55歳以降に引き出す際の税金が一部免除になる
SIPPは全額ではないのですが55歳以降で受け取る際に全体の25%分については税金がかかりません。
長く積立をしていると大きな金額になることが多いので25%分だけでも非課税になるのはお得ですね。
その他75%分については給与と同じように所得税がかかるので一度に引き出してしまうと所得が増えたとみなされて高い税金がかかってしまったり、運用している金額が減ることで思っていたよりもSIPPの受取額が減ってしまうこともあります。
老後のファイナンシャルプランを立てる時にSIPPの引き出し方はとても重要なので必要に応じてファイナンシャルアドバイザーもしくはプランナーに相談するのもひとつの方法です。
SIPPが相続税対策になる場合も
下記の条件に当てはまる場合SIPPを指定した受取人に税金軽減を含めて譲ることができます。
- 75歳になる前にSIPP加入者が亡くなった場合
- 2年以内に受取人が指定された場合
上記に当てはまらない場合は受け取る際に収入として所得税がかかります。
よくSIPPはISAと比較されることが多いですがISAは夫、妻(もしくはパートナー)しか相続税なしで譲渡出来ないのに対し、SIPPは受取人を柔軟に設定できます。(子供や孫に相続することも可能)
相続を含めて老後の資金を準備する場合はISAよりSIPPのほうが優遇されていることが多いです。
ISAについては他の記事でまとめているので良かったら見てくださいね。
関連記事
Help to Buy ISA と Lifetime ISA 貯蓄として活用するならどっち?
Workplace Pensionとは
SIPPを始めるのってなんだか難しそうと思った人もいるかもしれませんが、実はイギリスで会社に勤めている多くの人がWorkplace Pensionという形で個人年金に加入しているはずです。
最低拠出額は下記のパーセンテージで決められています。
Employer | Employee | |
2018 | 2% | 3% |
Since 2019 Apr | 3% | 5% |
SIPPのはじめかたについては別記事で書く予定ですが、もし投資経験があまりない、でも老後のことを考えて積立を増やしたいという場合は新しい口座を開かなくてもWorkplace pensionの口座に追加の積み立てをするという選択肢もあります。
商品が限られている(同じものに投資しているのに運用がいまいちな場合もあるので注意)デメリットはあるものの、口座維持手数料を余分に払う必要がなく一つの口座で管理ができるというメリットがありますよ。
ちなみにWorkPlace Pensionへの追加入金の方法は勤務先に連絡して追加入金の設定をお願いするか、もし知らせたくない場合や設定ができないと言う場合でも口座のある機関で直接手続き可能なケースがほとんどです。
詳しい方法はworkplace Pensionで加入している機関、証券会社に確認してみてくださいね。
SIPPのデメリットとは
最後にSIPPのデメリットもまとめます。
- 55歳まで引き出せない
- 口座維持費がかかるところが多い
- あくまでも投資商品なので元本割れのリスクがある
上記のデメリットの中で一番気をつけるべきポイントはSIPPは55歳まで引き出しができないこと。
55歳まで引き出せないため住宅購入や子供の教育にSIPPの資金を充てることは難しいことは年齢が若い人ほど頭に入れておきたいポイントです。
イギリスの個人年金SIPPのポイント まとめ
イギリスの公的年金は老後の費用をカバーするのに残念ながら十分とは言えないので早いうちからSIPPに資金を積立ながら節税をするのは得策と言えます。
しかし55歳まで引き出せない投資商品のため流動性リスクを考えると大きな出費(住宅購入など)が終わっていない人は少額の積み立てに留めておいて、徐々に積み立て額を増やす方法がいいかもしれません。
また投資は今までやったことがないけどWorkplace pensionでSIPPに入っているという人は四半期の運用レポートなどで自分が投資しているファンドの成績を定期的に確認することをおすすめします。
確認することで投資が身近になるし、ファンドの運用があまり良くないようであれば違う証券会社に切り替えるという判断も早めにできますよ。